映画批評「PLAN75」

ニートの独断と偏見による評価

4.4 out of 5 stars (4.4 / 5) 本当に面白かったです。

ストーリー

 「高齢者が増えたために若者が負担を強いられている。私の勇気ある行動が~」という犯行声明とともに老人ホームが襲われるといった事件が多発するようになった。

 世論も高齢社会に対して不満がつのるようになり、政府は何かしら対策を打たなければならなくなったのだ。

 そうして、少子高齢社会が進んだ将来の日本で、満75歳から生死の選択権を与えられる制度が施行された。

 ホテルの客室清掃の仕事にありつき、長年一人で暮らしてきた角谷ミチ。今は78歳だ。その職場には、高齢の仕事仲間が働いていたのだ。ある日、その仲間の1人が仕事中に倒れてしまう。そのことがきっかけになり、ミチは退職を余儀なくされてしまった。

 その後も生きていくために仕事を探すが、なかなか見つからず住むアパートも契約できなかった。やっと見つけた仕事は夜間の交通誘導員という、体力的にキツイような日雇いの仕事しかない。

 そんな途方に暮れていた彼女は、政府がやっている慈善事業の炊き出しをきっかけにプラン75の申請を検討し始めるのだった。

スタジオ・キャスト

映画スタジオ

配給 ハピネットファントム・スタジオ

制作 ローデッド・フィルムズ

制作協力 SS工房

監督

  • 早川千絵

 NYの美術大学で写真を専攻し独学で映像作品を制作しました。短編『ナイアガラ』が2014年に数々の賞を受賞しています。

撮影

  • 浦田秀穂

キャスト

  • 俳優:賠償千恵子 / 役:角谷ミチ

 松竹にスカウトされて映画デビューした女優です。『男はつらいよ』のさくら役で有名です。

  • 俳優:磯村優斗 / 役:岡部ヒロム

 『仮面ライダーゴースト』、連続テレビ小説『ひよっこ』などに出演しています。

  こんなイケメンが、泥臭い映画に出演してくれること自体を嬉しく思います。

  • 俳優:ステファニー・アリアン / 役:マリア

 フィリピン人の日本モデルです。日本人の父を持ちます。フィリピンでも日本でもCMに映画に多く出演しています。

 フィリピンパブなどでは柴咲コウさんのような綺麗な人がいるようですが、このひとは家庭的な魅力も感じさせる美人です。こんかいの介護士役にハマっている感じがいたしました。

 日本人の嫁として、働いているフィリピン人介護士さんには何人もあったことがあります。文化の違いやコミュニケーションに四苦八苦しながらも、ちょっと天然で憎めないという要素があり、まさにマリアのようなビジュアルをしています。

世界観

 プラン75という、日本では道徳観に触れるようなifの世界を描く問題作?です。

 デイサービスの風景もリアルに撮影されており、取材などの勉強もされたのかなと伺える映画です。

 冒頭で流されるような悲劇的な犯罪は、実際には少なくなってきているとはいえども起きています。メディアに大きく取り上げられ、見たくもないニュースになるのです。

 介護士や看護師が、老人に対して暴挙を振るうことがたまにおきます。そんなとき、「かわいそうだった」などの発言があったと報道されるのです。

 福祉の現場ではよく「生きていたくない」「死にたい」と耳にします。鵜呑みにしてしまったり、疲れていて思考がまともでなかったりするときに、起こってしまうのかもしれません。

 そんな世界が存在する中、こんな制度があったらどうでしょうか?

 受け入れられる人もいれば拒絶する人もいるでしょう。施行役員への嫌がらせ行為もありますし、プラン75で働く人たちの心の葛藤もあります。

 その心の在り方が、本当に人間臭くて、すごく面白い映画でした。

 膨れ上がる医療費控除額などが問題なのであって、このような極端な政策はなされないとは思いますが、「日本人の倫理観や文化を壊さないような対策を」と、考えさせられます。


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