映画批評「ラストナイト・イン・ソーホー」

ニートの独断と偏見による評価

4.1 out of 5 stars (4.1 / 5)

 「トーマシン・マッケンジー可愛い」と思って、するすると映画館へ引きこまれていきました。この映画を観ようと思ったのは、そんな不純な動機です。しかし、そんな下心をもって観てはならなかったのです。

 トーマシンさんが多少なり着飾ったら、そりゃあ可愛いわけです。この映画の最大の罠です。

 映画を観終わったあと、亡霊と一緒に焼かれた気分で帰宅しました。

 冒頭に「ダイアナに捧ぐ」というメッセージが表示されます。パンフレットを開いて、その意味を知って下心にまたダメージいただきました。

 映画とその余韻で2重のホラーを楽しめたことにすれば、実に唯意義とすることができるでしょう。けれど、ホラーは苦手です。最初にダンスをしていたエロイーズを思い出せません。よって、星4.5以上の評価はできませんでした。

ストーリー

 田舎町にファッション・デザイナーを夢る少女が祖母と2人で暮らしていた。自前のトルソーをもち、着る服は自分で作成している。自室には『ティファニーで朝食を』(1961)と『スイート・チャリティー』(1969)が貼られていて、60Sカルチャーが大好きなのだという。音楽も蓄音機を介してレコードで聴くオタクぶりで、聞く音楽も全て60年代のもの。そんな彼女のもとに一通の手紙が送られてくる。
「エロイーズ、あなた宛てよ」
 祖母ペギーの手から奪い取るように手にしたものは、デザイン学校の合格通知だった。
「合格したわ、これでロンドンに行ける」
 はしゃぐ孫をみて心配になるペギー。
「ねえ、本当にロンドンに行くの?心配だわ、あなたには”感じ取る力”があるし」
「大丈夫、私は強いもの」
 心配する祖母をよそに、ロンドンに行く支度を終える。
「せめて、これを持っていって」
 母が写った写真だった。鏡に映った自分の隣には亡き母の姿が写っている。エロイーズには亡くなった人の思念を追体験できる能力をもちあわせているのだった。

 ロンドンの学生寮に着くと、ルームメイトの同級生に服を田舎臭いとバカにされる。学生の新人歓迎会は、うるさいだけだった。ルームメイトとは馬が合わず、寮の生活もエロイーズには合っていなかった。そんなとき、手書きで書かれた入居者募集の紙切れを見つける。

 部屋を確認しにいくと、管理人のおばあちゃんからルールを聴く
「男を連れ込むことは厳禁」
「夜8時以降は…」
 特に厳しい条件に思えなかったので、即断即決で部屋を借りることにする。部屋には蓄音機に化粧台、ベッドに木造の屋根裏ときていてレトロな雰囲気があり、とても気に入ってしまったのだ。

 部屋を借りたことで、同級生が男を連れ込こむことも、服を馬鹿にされることもなくなった。やっと一息つけるようになった主人公エロイーズは、借りた屋根裏部屋で眠りについた。
 ここから、少女サンディの転落人生の追体験が始まる。

トレーラー

スタジオ・キャスト

映画スタジオ

配給:パルコ、ユニバーサル映画

宣伝:スキップ

監督

  • エドガー・ライト

 『ベイビー・ドライバー』を過去に手掛けた監督です。文句なしの面白さで、大ヒットを叩き出しました。そんな監督の最新作!なんて宣伝されたら、観に行く人は多いでしょう。

 1974年4月18日生まれ、イングランド・ドーセット出身。少年時代から友人と共にSUPER8カメラで映画を撮り始めています。映画を撮るために生きている人なのでしょうか。

キャスト

  • 女優:トーマシン・マッケンジー / 役:エロイーズ

 バービー人形のような、20代になったばかりの女優さんです。演じる役は、レイプ被害者だったり、ナチスに迫害されているユダヤ人だったり、少しくらい影をおとすものが多いように感じます。

 エドガー・ライト監督は、「自然な演技が素晴らしい。」「リアリティに説得力を感じる」と女優トーマシンを評価をしています。

 肌着のイメージが多いのは、私だけでしょうか。

  • 女優:アニャ・テイラー=ジョイ / 役:サンディ

 アメリカのマイアミ出身の女優さんです。『ウィッチ』に始まり、『ニュー・ミュータント』と何かしら強い印象があります。今回は『サンディ』、今後は『ピーチ姫』、『マッドマックス』と、ちょっと注目しなければならないかもしれません。

  • 女優:ダイアナ・リグ / 役:ミズ・コリンズ

 1938年7月20日生まれ、イングランド・ヨークシャー出身。TVドラマ「おしゃれ㊙探偵」(61~69)のヒロイン「エマ・ピール」、『女王平価の007』(69)のボンドウーマン「トレイシー」役で広く知られています。

 1957年に舞台女優として活動を開始し、1994年にトニー賞、1988年に大英帝国勲章CBE、1994年に同デイムを受賞しました。『ゲーム・オブ・スローンズ』(11~19)の「オレナ・タイレル」は存在感があります。

 2020年9月、逝去されました。この作品のメッセージを女優として深く残しています。お悔やみ申し上げます。

感想

 女性を物のように扱ってはいけないし、この作品のように女性が活躍する場面も世の中で増えてきたように思えます。それでも、このような映画が「面白い」と人々に言わせるのは、女性が思う存分活躍できる世界が来ていないからなのでしょうか。なんにせよ、私は劇中の男どもと一緒に終盤で焼かれているので、少しは考えたほうがいいのでしょう。

 描かれている60年代は、酷かったです。そして現代の醜さも同時に表現されています。昔はよかったと、憧れるひともいるかもしれません。主人公が自分で作った服は、同年代のファストファッションのようなものに比べると、華やかな印象があります。普通に目を引いてオシャレです。昔の方が優れていることもあるでしょう。しかし、今は未成年の売春行為に目を光らせるような方がいたり、女性が働ける環境が昔よりはあったりします。過去にあった悲惨な状況が、起こらないように対策してきた結果だと言えるとおもいます。
 やっぱり、「昔より今が良いな」と思うばかりです。

 さて、映画について触れましょう。音楽も衣装もタイムリープ・ホラーという設定も、非常に凝っていて面白いです。私の頭では考えられないストーリー構成です。
 ミズ・コリンズが屋根裏部屋を貸していた理由が知りたいと思いました。亡き人の思念をみれるという能力ではないのではないかと思うシーンがありました。死体の処理の仕方が雑すぎて、のめり込んでいたのにフィクション感のせいで現実に戻されることもありました。溶かして、オーブンで焼いて、セメントで固めるくらいすると「ホラー感アップなのに」とも思わなくもないです。お母さまの写真と亡霊をタイムリープに全然絡ませてくれない点も、「何だったんだ」と思いました。
 もう少し、最後の畳みかけを文句を言わせないぐらいのものにして欲しかったです。

 今日は、トーマシン・マッケンジーがでているジョジョ・ラビットを観て寝たいと思います。


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