目次
相続の開始
相続とは
死亡した人(被相続人)が死亡したときに持っていたすべての財産(権利と義務)を一定範囲の親族(相続人)が引き継ぐこと。
民法上の親族とは、6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族のことをいう。
相続税の納税義務者
相続発生時に国内に住所がある者は、相続や遺贈により取得した国内外すべての財産に課税される。
法定相続人と相続順位
相続人の範囲と順位
民法で定める相続人は法定相続人と呼ばれる。
- 配偶者は常に相続人になる
- 正式な婚姻関係にない内縁の妻や前妻は対象外
- 配偶者以外には、相続の優先順位があり、順位が上の者が相続した場合、以下の者は相続できない
- 第1順位の子がいる場合、第2順位の父母、第3順位の兄弟姉妹は相続できない
相続の順位
- 配偶者
- 常に相続人になる
- 第1順位
- 子(養子、非嫡出子を含む)
- 実子と養子の相続分は同じ
- 非嫡出子と実子の相続分は同じ
- 第2順位
- 直系尊属
- 父母や祖父母
- 直系尊属
- 第3順位
- 兄弟姉妹
相続人になれない場合
- 相続欠格にあたる場合
- 被相続人を殺害したり、脅迫や詐欺により遺言を書かせた場合
- 排除にあたる場合
- 被相続人を虐待・侮辱していた場合
- 相続を放棄した場合
代襲相続
代襲相続とは
相続人となるべき子が、相続開始時に親より先に亡くなっている場合や、相続欠格や廃除になっている場合、その者の子が相続人になること。
代襲相続の相続分は、本来の相続人と全く同じになる。
- 相続放棄した者の子は代襲相続できない
- 相続欠格や廃除にあたる者の子(孫)は代襲相続できる
- 子の場合は限りなく下へ代襲相続ができる
- 子→孫→ひ孫と代襲相続人になる
- 相続人となる兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、代襲相続できるのはその子まで
- 被相続人の甥と姪まで
相続の承認と放棄
相続人は、被相続人の財産上の権利・義務を相続するか、しないかを自由に決めることができる。
相続の承認
単純承認
- 被相続人の財産と消極財産(借金)を全て受け継ぐ
- 相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に相続の放棄や限定承認をしなければ、単純承認したことになる
- 相続放棄などを行う前に、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合は、単純承認したものとみなされる
限定承認
- 相続人は受け継いだ財産の範囲でのみ被相続人のしゃっきを支払う義務を負う
- 受け継いだ財産が1,000万円、借金が2,000万円あった場合に、1,000万円のみ返済義務を負う
- 相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申述書を提出しなければならない
- ぜん相続人が共同で行う必要はなく、単独でも放棄できる
法定相続分の計算
指定相続分と法定相続分
指定相続分とは
遺言による相続分のことをいい、法定相続分より優先される。
法定相続分とは
民法で定められた割合のことをいう。
パターン | 配偶者の相続割合 | 他の相続人の相続割合 |
---|---|---|
A | 2分の1 | 第1 順位 子 2分の1 |
B | 3分の2 | 第2順位 直系尊属 3分の1 |
C | 4分の1 | 第3順位 兄弟姉妹 4分の1 |
- 配偶者は常に相続人となる
- 実子と養子および非嫡出子の相続分は同じ
- 相続放棄した場合は、民法では最初から相続人でなかったとこになり、その者の子は代襲相続はできない
法定相続分の計算
配属者の直系尊属(父母)の場合
- 配偶者:3分の2
- 父と母:3分の1
- 父:6分の1
- 母:6分の1
- 兄:なし
養子の種類
特別養子縁組
実の父母との親族関係が終了し、養親のみが父母となる制度。
普通養子縁組
実の父母と養親である父母との両方の親子関係が継続する制度。
嫡出子と非嫡出子
嫡出子とは
正式な婚姻関係にある夫婦間に生まれた子のこと。
非嫡出子とは
法律上の婚姻関係がない男女間に生まれた子のこと。
非嫡出子が相続する場合は、認知が必要。
相続順位・相続の割合
嫡出子も非嫡出子も相続順位は同じ、相続できる割合も同じ
成年後見制度
成年後見制度とは
認知症などで十分な判断能力を欠いた高齢者や精神的な障がいを持った者が財産管理や相続等において不利にならないように、これらの人たちの権利を保護するための制度。
法定後見制度
- すでに判断能力等が不十分な場合の制度
- 支援内容は対象者の判断能力程度により、「後見」「保佐」「補助」から選択する
任意後見制度
- まだ判断能力がある場合の制度
- 将来に備えて任意後見人と契約を結ぶ
- FPを含め、誰でも任意後見人になれる
- 任意後見人になるために資格などは不要
寄与分と特別寄与料制度
寄与分とは
相続人が被相続人の介護などで貢献した場合に、遺産分割のときに本来の相続分に上乗せして受け取れる財産のこと。
特別寄与料制度
相続人である息子の妻が被相続人の介護をしても、相続発生時に寄与分の対象ではなかった。
特別の貢献があった相続人ではない相続人に対して金銭を請求できるのが特別寄与料制度。各相続人が各自の法定相続分等に応じて、全員で特別寄与者に支払う。
配偶者居住権
被相続人の持ち家に住んでいる配偶者が、被相続人の死亡後も原則として一生涯その家に無償で居住することができる権利。
配偶者居住権
- 配偶者居住権を利用すれば、配偶者は家を相続せず、配偶者居住権を相続することで、その家に住み続けることができる
- 被相続人からの遺言や遺産分割協議により配偶者が取得できる
配偶者短期居住権
- 相続開始時に被相続人の持ち家に住んでいた配偶者が、遺産分割が終了するまで、その家に無償で済むことができる権利
- 最低6カ月間
- 相続の開始とともに配偶者に自動的に権利が発生する
配偶者居住権が設定された住宅の相続税評価額
配偶者居住権のの設定された住宅をほかの相続人が相続した場合
相続税評価額ー配偶者居住権の評価額=相続税評価額
となる。
配偶者居住権は、居住権を取得した配偶者が亡くなった場合に消滅し、相続税の対象にならない。
遺産分割
遺産分割の種類
指定分割
- 遺言により分割する方法。遺産の全部または一部について行うことができる
協議分割
- 遺言がない場合などに相続人全員の合意により分割する方法
- 指定分割が優先されるが、相続人全員の合意があれば遺言内容と異なる分割や法定相続分と異なる分割が可能
- 協議成立後、相続人全員の署名・押印により遺産分割協議書を作成する
ニート生徒会長
実際やる事といったら、話し合って、送られてくる書類に、数か所に名前とハンコを押すだけだけどね。
遺産分割の方法
現物分割
個別の財産ごとに取得する者をきめて、遺産を分割する方法。
ケース
土地と自宅を長男、預金を長女に分割する など
換価分割
相続財産の全部を売却して、その代金を分割する方法。
代償分割
特定の相続人が財産を取得して、代わりに自分の現金などの固有財産(代償財産)をほかの相続人に支払う方法。
贈与税の対象ではなく相続税の対象。
ケース
長男が自宅とその土地等すべての遺産(2億円相当)を相続する代わりに、長男が自分の財産から次男に1億円を支払う。
夫婦間で贈与された居住用不動産の遺産分割時の特例
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産の贈与や遺贈があった場合、その不動産については、原則、遺産分割の対象から除外できるようになった。
ケース
居住用不動産(3,000万円)、預貯金(1,000万円)を配偶者と子1人が相続する場合、生前贈与によって配偶者に住居が贈与されていた場合、住居は財産分割の対象となり、預貯金の1,000万円を配偶者と子で分割することになる。
遺言と遺留分
遺言とは
遺言者の死亡と同時に効力を発生する法律行為。
- 遺言は満15歳以上で意思能力を有する者であれば誰でも可能
- 未成年であっても親などの法定代理人の同意は不要
- 遺言は自由に撤回や書き直しができる
- 最も新しいものが有効
- 遺言は単独で行う行為
- 夫婦共同の遺言などは認められない
遺言の種類
自筆証書遺言
- 作成方法
- 本人が本文・日付・氏名を原則として自分で書き押印する
- 証人
- 不要
- 検認
- 原則、必要
- 保管について
- 2020年7月以降、自筆証書遺言を法務局で保管することが可能になった
公正証書遺言
- 作成方法
- 本人が口述して公証人が筆記する
- 公証人役場に保管される
- 証人
- 証人2人以上の立会いが必要
- 検認
- 不要
秘密証書遺言
- 作成方法
- 本人が作成し署名・押印し、公証人の前で本人が住所氏名を記入、公証人が日付を記入する
- パソコンやテープレコーダーなどの作成は認められていない
- 証人
- 証人2人以上の立会いが必要
- 検認
- 必要
自筆証書遺言
自筆証書遺言の本文は自書しなければならない。
財産目録を蔑視として添付する場合、財産目録については、パソコン等での作成も可能になった。
検認
相続人に遺言書があることや、その内容を知らせ遺言書の偽造や変造を防止するために家庭裁判所が行う証拠保全の手続きのこと。
- 遺言の有効・無効を判断する手続きではない
- 公正証書遺言は公証人役場に遺言書が保管されており、偽造のリスクがないため検証は不要
- 自筆証書遺言や秘密証書遺言は懸賞の申し立てにより、相続人の立会いのもと家庭裁判所で開封する
- 検認を受ける前に遺族が開封した場合でも、遺言書は無効にならない
- 自筆証書遺言を法務局で保管している場合、家庭裁判所での検証は不要
遺留分とは
あまりにも相続人に不利益な遺言を残され、不合理な事態にならないために、民法で一定割合を相続人に保証する制度が規定されている制度。
ケース 第三者に全財産を取得される など
遺留分を有する者を遺留分権利者という。
遺留分権利者の範囲
- 配偶者、子、直系尊属 が含まれる
- 兄弟姉妹には権利がない
遺留分の割合
- 直系尊属だけが相続人である場合 財産の3分の1
- その他 財産の2分の1
計算例
配偶者と3人の子の場合
- 配偶者 財産×2分の1×2分の1=財産×4分の1
- 3人の子 財産の2分の1×(2×3)分の1=財産×12分の1
- 遺留分権利者は、被相続人の生前に家庭裁判の許可を得ることで、遺留分を放棄することができる
- 相続人の遺留分を侵害する遺言であっても、遺言の効力は有効
遺留分侵害額請求権
遺言などにより遺留分が侵害された場合に遺留分を主張する権利。
- 侵害された金額を金銭で支払うよう請求できる
- 請求しなければ、遺言道理に相続することになる
- 相続開始から10年を経過した場合、事項によりその権利は消滅する
- 原則として、遺留分が侵されたことを知った日から1年以内が実行期限
遺贈と死因贈与
遺贈とは
被相続人の遺言により一方的に財産を特定の者に与えること。
- 財産を取得した者を遺贈者という
- 遺贈された財産は相続税の対象となる
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