目次
利子所得
利子所得とは
- 預貯金の利子
- 国債などの公社債の利子
- 公社債投資信託の収益分配金 など
ニート生徒会長
同じ公社債の利子でも公社債の利子や公社債投資信託の分配金に対する税制は預貯金とは異なるよ。
税制
- 預貯金の利子について
- 源泉分離課税の対象
- 税率は20.315%
- 源泉徴収され、課税関係は終了する
利子所得の金額
- 利子所得の金額は、源泉徴収される前の収入金額である
利子所得=利子収入金額
配当所得
配当所得とは
- 法人から受け取る利益の配当
- 株式の配当金
- 株式投資信託
- 上場投資信託(ETF)の収益分配金
- 不動産投資法人(J-REIT)の収益分配金 など
これらの商品を上場株式等という
税制
- 配当所得は原則、総合課税制度の対象
- 上場株式等の配当等については
- 申告不要制度
- 申告分離課税 を選択できる
- 発行済株式の3%以上を保有している大株主が配当を受け取った場合
- 総合課税のみ
配当所得の金額
配当所得=配当収入金額ー元本取得のための負債利子(株式等の借入金の利子)
配当所得ポイント
- 申告分離課税を選択すると
- 受取配当金と上場株式等の譲渡損失との損益通算が可能
ケース
株式の譲渡損失が50万円、受取配当金が40万円ある場合、申告分離課税を選択して損益通算すると全体で10万円の損失になり、配当金の40万円には課税されなくなる
ニート生徒会長
総合課税を選択し確定申告をすることで、配当控除の適用が受けられるよ。
配当所得の税制
- 申告不要制度を選択 → 20.315%税金が差し引かれて終了
- 申告分離課税を選択 → 上場株式等の譲渡損失と損益通算ができる
- 総合課税を選択 → 配当控除の適用を受けることができる
ニート生徒会長
発行済み上場株式の3%以上を保有している大株主の場合、総合課税のみだよ。
注意点
- 投資信託でも公社債投資信託の分配金は利子所得になる
- 株式投資信託の分配金は配当所得になる
不動産所得
不動産とは
- 土地や建物、不動産上の権利、船舶・航空機の貸付による所得のことをいう
- 不動産貸付を事業的規模で行っていても、事業所得にはならず不動産所得に該当する
事業的規模かどうか
- 5棟・10室基準による
- 家なら5棟以上
- 部屋なら10室以上 で事業的規模となる
事業的規模の不動産所得がある場合
- 青色申告特別控除などの特典をうけることができる
- 65万円の控除
不動産所得の金額
不動産所得の計算
不動産所得=総収入金額ー必要経費
総収入金額とは
- 地代
- 家賃
- 駐車場の賃料
- 権利金
- 更新料
- 礼金
- 共益費 など
敷金・保証金のうち入居者に変換しないことが確定したものは総収入に含める
必要経費とは
- 減価償却費
- 土地・建物にかかる借入金利子
- 固定資産税
- 不動産取得税
- 火災保険料
- 募集広告費
- 管理費
- 修繕費 など
必要経費にならないもの
- 所得税や住民税および不動産に投資した元本は必要経費にならない
- 親族に支払った家賃は必要経費にならない
不動産所得の税制と損益通算
- 不動産所得は総合課税の対象
- 不動産所得に損失がある場合
- 原則としてほかの所得と合算して損益通算できる
例外
- 不動産所得の損失のうち、土地を取得するための負債利子の金額は損益通算の対象にはならない
ニート生徒会長
建物を取得するための負債利子の金額は損益通算の対象になるよ。
例題
【不動産所得の損益通算】
総収入金額200万円、必要経費300万円(うち、土地を取得するために要した負債利子が50万円がふくまれる)の場合、損益通算の対象となる金額はいくらか
回答
必要経費300万円のうち、鳥を取得するための負債利子50万円は、損益通算できない。よって、
【損益通算される不動産所得】
200万円ー(300万円ー50万円)=ー50万円
50万円がほかの所得の黒字金額と損益通算される
事業所得
事業所得とは
- 農業
- 漁業
- 製造業
- 卸売業
- 小売業
- サービス業 など
継続的に行う事業から生じた所得のこと
事業所得にならないもの
- 事業用の固定資産を譲渡した場合の所得
- 車両や機械装置などの譲渡のこと
- 事業所得ではなく譲渡所得
税制
- 事業所得は、総合課税の対象
- 事業所得は所得金額の多寡にかかわらず確定申告が必要
事業所得の金額
事業所得=総収入金額ー必要経費
総収入金額
- 事業により確定した売り上げ
- 手数料収入 など
必要経費
- 売上原価
- 商品などの仕入れ代金
- 減価償却費
- 給料・賃金
- 持待交際費
- 家賃・水道光熱費等
減価償却の方法
- 建物や車両および言っての備品などの資産の価値の減少分
- 土地は対象外
- 時間の経過とともに古くなり価値が減少していく
- 耐用年数に分けて費用として計上する
- 価値の減少分を使用する期間を耐用年数という
減価償却の方法
- 定額法か定率法を選択する
- 所轄の税務署所長に届け出る
- 定額法
- 毎年、資産の残額に一定割合を掛けて、減価償却費を計算する
ニート生徒会長
平成10年(1998年)4月1日以後に取得した建物、
平成28年(2016年)4月1日以後に取得した建物付属設備および構築物
は定額法のみだよ。
ケース
1,000万円のアパートを購入し、定額法の償却率が0.05の場合、1年間で必要経費に算入できる減価償却費の金額は1,000万円 × 0.05=50万円となる
法定償却法
- 定率法か定額法のどちらかを選択しなかった場合
- 不動産を除いて法人は定率法
- 個人事業主の場合は定額法 で計算する
取得価額による減価償却の処理方法の違い
※必要経費として処理する方法である
- 少額減価償却資産
- 10万円未満の資産
- または使用可能期間が1年未満
- 取得時に一括して費用処理(損金算入)できる
- 10万円未満の資産
- 一括償却資産
- 10万円以上20万円未満の資産
- 3年間で3分の1づつ均等償却できる
給与所得
給与所得とは
- 給与
- 賞与
- 役員報酬
- 金銭以外のものでの支給
- その他必要経費
- 借金の返済の免除
- 無利子の貸付
- かなり低い金利で貸付 などを受けた場合の利益を含む
税制
- 給与所得は総合課税の対象
- 給与所得以外の所得がない場合などは、源泉徴収のみで課税関係が終了
- 確定申告する必要がない
- 源泉徴収された税額に過不足があった場合は、年末調整により精算される
例外(確定申告が必要な場合)
- 給与所得者で年間の給与収入が2,000万円を超える場合
- 給与所得および退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える場合
- 医療費控除や配当控除の定期用を受ける場合
- 2か所以上から所得を受けている場合
給与所得の金額
給与所得=給与収入金額ー給与所得控除額
給与収入額:年収
給与所得控除額:最低55万円
給与所得控除額早見表
給与収入金額 | 控除額(改正後) | 控除額(改正前) |
---|---|---|
165万5,000円以下 | 55万円 | 65万円 |
165万5,000円超 180万円以下 | 収入金額×40% ー10万円 | 収入金額×40% |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30% +8万円 | 収入金額×30% +18万円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20% +44万円 | 収入金額×20% +54万円 |
660万円超 850万円以下 | 収入金額×10% +110万円 | 収入金額×10% +120万円 |
850万円超 1,000万円以下 | 195万円 | 収入金額×10% +120万円 |
1,000万円超 | 195万円 | 220万円 |
- 給与収入が850万円以下の給与所得控除額は、一律10万円に引き下げられた
- 給与収入が55万円以下であれば、給与所得金額はゼロになる
所得金額調整控除(給与所得控除額の調整)
給与等の収入金額が850万円をこえる居住者の場合
- 所得金額調整控除の要件
- 本人が特別障がい者に該当する人
- 年齢23歳未満の扶養親族がいる人
- 特別障がい者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人
ケース
給与収入が1,500万円の場合の給与所得調整控除額
給与収入が1,000万円を超えているので、1,000万円から850万円を差し引いた金額の10%が控除額となる。
(1,000万円ー850万円)×10%=15万円(上限)
15万円が給与所得金額から差し引かれる。
ニート生徒会長
年末調整で所得金額調整控除の適用を受ける場合、「所得金額調整控除申告書」を提出する必要があるよ。
譲渡所得
譲渡所得とは
- 不動産
- 賃貸用の不動産を含む
- 株式
- ゴルフ会員権 などの資産の譲渡による所得をいう
譲渡所得にならないもの
- 棚卸資産(商品や製品)を譲渡した場合は事業所得
- 山林を譲渡した場合は山林所得
譲渡所得の区分と税制
分離課税と総合課税
- 申告分離課税
- 土地・建物等の譲渡
- 株式等の譲渡
- 総合課税
- 申告分離課税以外の譲渡
- 金地金の譲渡 など
短期譲渡所得と長期譲渡所得
申告分離課税 | 土地・建物等 | 譲渡した年の1月1日において、所得期間が5年以下 譲渡した年の1月1日において、所得期間が5年超 | →短期譲渡所得 →長期譲渡所得 |
申告分離課税 | 株式等 | 短期長期の区分は無い | |
総合課税 | 金地金等 | 所有期間が5年以下 所有期間が5年超 | →短期譲渡所得 →長期譲渡所得 |
譲渡所得の金額
総合課税となる場合
譲渡所得金額=総収入金額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除額
総収入金額:売却代金
取得費:購入代金
譲渡費用;手数料など
特別控除額:上限50万円
短期譲渡所得と長期譲渡所得の両方がある場合
- 短期譲渡所得から控除する
- 残りがあれば長期譲渡所得から控除する
- 全体で上限は50万円
- 長期譲渡所得はその2分の1の金額を総所得金額に算入する
- 短期譲渡所得金額がある場合はそのまま金額を総所得金額に算入する
問題
以下の譲渡所得がある場合、特別控除後の所得金額はいくらか。
・短期譲渡所得20万円
・長期譲渡所得50万円
答え
上限50万円ー短期譲渡所得20万円=余り30万円
長期譲渡所得50万円ー余り30万円=特別控除後の所得金額20万円
申告分離課税となる場合(土地・建物の譲渡)
譲渡所得金額=総収入金額ー(所得費+譲渡費用)ー特別控除額
- 概算取得費になるケース
- 所得費が不明な場合
- 実際の所得費が収入金額の5%より少ない場合
- 概算取得費の計算
- 収入金額×5%を取得費とすることができる
土地・建物の譲渡
短期譲渡所得となる場合
税額=課税短期譲渡所得金額×39%
所得税30%
住民税9%
※復興税込みで39.63%
長期譲渡所得となる場合
税額=課税長期譲渡所得金額×20%
所得税15%
住民税5%
※復興税込みで20.315%
株式の譲渡(上場株式等)
譲渡所得金額=総収入金額ー(所得費+譲渡費用+負債利子)
譲渡費用:委託手数料
一時所得
一時所得とは
- 営利を目的とした継続的な行為から発生した所得以外の所得
例
- 保険の満期保険金や解約返戻金
- 契約者と保険金受取人が同じで被保険者が第三者の場合の、生命保険の死亡保険金
- 懸賞金や賞金
- 競輪や競馬の払戻金 など
税制
- 一時所得は総合課税の対象
一時所得の金額
一時所得=総収入金額ー収入を得るために支出した金額ー特別控除額
特別控除額:最高50万円
- 一時所得が黒字の場合、上記金額の2分の1の金額がほかの所得と合算され、総合課税の対象になる
問題1
保険料負担者と満期保険金の受取人が同一である養老保険の満期保険金等が以下のようであった。総所得金額にさんにゅうされる金額はいくらか。
・満期保険金500万円(一時所得)
・払込み保険料総額200万円
答え
養老保険の満期保険金を保険料負担者が受けると、一時所得になる
一時所得金額=500万円ー200万円ー50万円=250万円
総所得金額に算入される金額=$\frac{250万円}{2}$=125万円
問題2
2019年分の給与所得の金額が700万円、譲渡所得(総合課税の対象)の損失額が200万円、一時所得の損失額が50万円のとき、総所得金額はいくらか。
答え
700万円ー200万円=500万円
※一時所得の損失額50万円は損益通算できない
退職所得
退職所得とは
- 退職金
- 役員退職金
- 企業年金の退職一時金 など
税制
- 分離課税の対象
退職所得の金額
退職所得=$\frac{退職金-退職所得控除額}{2}$
勤続年数別の退職所得控除額
- 勤続年数20年以下
- 40万円×勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数20年超
- 800万円+40万円×(勤続年数ー20年)
- 勤続年数が1年未満の端数機関がある場合がある場合は1年と数える
退職所得の追加ポイント
- 退職者が「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合、収入金額の20.315%が源泉徴収されている
- 退職者の住所地の税務署に確定申告し、税金を精算する必要がある
- 退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、勤続年数に応じて税額が計算される
- 被相続人の死亡後、3年を経過した後で確定した死亡退職金は受け取った者の一時所得になる
- 3年以内なら退職所得
問題
勤続年数が22年3カ月の者が退職に伴い退職金2,000万円を受け取った場合の退職所得の金額はいくらか。
答え
勤続年数に端数があるので、22年+1年=23年を勤続年数とする
退職所得控除額
800万円+70万円×(23年ー20年)=1,010万円
退職所得
$\frac{2000万円-1010万円}{2}$=495万円
山林所得
山林所得とは
- 山林の伐採または譲渡による所得
税制
- 分離課税の対象
山林所得の金額
山林所得=総収入金額ー必要経費ー特別控除額
特別控除額:上限30万円
税制
税額=$\frac{山林所得の金額×税率}{5}$×5
ニート生徒会長
税金が少なくなるように5分5乗方式で計算するよ
雑所得(ほかのいずれの所得にも該当しない所得)
雑所得とは
- 公的年金の老齢給付金
- 国民年金
- 厚生年金
- 企業年金 などの公的年金
- 年金形式で受け取る退職金
- 個人年金の保険金
- 作家以外の人が受け取る原稿料・印税・講演料など
- 仮想通貨の取引による所得
- ビットコイン など
税制
- 総合課税の対象
- 雑所得がマイナスの場合、他の所得と損益通算できない
雑所得の金額
- 公的年金等とそれ以外の雑所得に分けて計算する
- 胡適年金等の雑所得と公的年金等以外の雑所得を合計する
雑所得=公的年金等の雑所得+公的年金等以外の雑所得
公的年金等の雑所得
公的年金等の雑所得=公的年金等の金額ー公的年金等控除額
- 公的年金等の控除額は、一律10万円引き下げられた
- 年齢と所得金額に応じて控除額が異なる
- 年齢が65歳未満か、以上か
- 公的年金以外の合計所得によって異なる
- 1,000万円以下
- 2,000万円以下
- 2,000万円超あるか によって異なる
公的年金等以外の雑所得
公的年金等以外の雑所得=公的年金等以外の雑所得金額ー必要経費
参考書リンク
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