私の独断と偏見による評価
(4.5 / 5)目次
ストーリー
1969年6月から8月にかけて計6回のソウル・フェスティバルが行われた。場所は、ニューヨークのハーレムと呼ばれるマウント・モリス公園。シンガーとして活動家として動いていたトニー・ロウレンスが企画し、当時の市長ジョン・リンゼイが協力するといった、街を上げての大イベント。
ソウル、ゴスペル、ブルース、ジャズ、ラテン、アフリカ音楽、ポップスと多様な音楽がハーレムに響いた。参加したのは旬の豪華アーティストばかり。この映像は、プロデューサーのハル・トゥルチンによって記録されていたが、公開されずに50年間眠り続けていた。
当時のハーレムの状況、社会情勢を演奏中に織り交ぜていて、ドキュメンタリー映画のような要素もある映画。時代の変わり目に生まれた贅沢なイベントと、社会情勢を踏まえたブラックカルチャーを1度に体験できる。
スタジオ・キャスト
映画スタジオ
ウォルト・ディズニー・ジャパン
監督
- アミール”クエストラヴ”トンプソン
ヒップホップグループ、ザ・ルーツのドラマーであり、プロデューサーとして態評価を受けている監督。
アル・グリーンやベティ・ライトの作品で馴染みのある人もいるでしょう。
米国の人気番組「ザ・トゥナイト・ショウ」のハウスバンドを務めるクエストラヴことアミール・トンプソンが幻のソウル音楽の祭典を蘇らせました。
出演ミュージシャン
- フィフス・ディメンション
華やかにポップ・フィールドで舞う男女5人組。
当時、黒人はポップスを歌わないと先入観をもたれていたため、レコードのジャケットが出るまで歌っているのは白人だと思われていた。いざジャケットが表に出てみると、世間は黒人だったことに驚き、それをフィフス・ディメンションのメンバーは「黒人らしくないと言われ、腹が立った。」と語っている。
軽やかな親しみやすい曲調の音楽に、5人の美しいハーモニーが人気を生んだグループ。
- チェンバーズ・ブラザーズ
都会育ちの4人を擁した人種混合のバンド。黒人の本物の兄弟4人に、白人のドラマー、ブライアン・キーナンが加わった5人組バンド。当時、人種混合バンドは珍しいものだった。
白人に何ができるんだ。と思われていたが、演奏が始まるとそんなのは吹っ飛んだと劇中でも話されている。ブライアン・キーナンの必要性は、映像中の演奏を聴くだけでも納得ができるでしょう。
- スライ&ザ・ファミリー・ストーン
1969年のスライ&ザ・ファミリー・ストーンは絶頂期。ステージに登場するやいなや、会場の人たちが前におしかけて潰れそうになるほど。
人種混合のグループで、時代を謳うような歌詞のエヴリデイピープルが大ヒットした。「人が違えばやり方も違う、仲良くやってこうじゃないか。」そんな歌詞を歌っています。
- ニーナ・シモン
「2階の白人女学生たちが床を叩いていやがらせする、その時ニーナの曲を聞くと、幸せになれた。」と語る人がいる。直接的な表現はないものの、歌詞に曲に「怒り」を込めて歌い、同胞たちが強く引き込まれたとこでしょう。
ピアノを弾く姿が凄く綺麗で、髪型やピアスもとても特徴的。聞きやすいキレイな音楽を奏でる。
劇中での、彼女の映像は凄かった。
- スティーヴィ・ワンダー
驚異の天才。ピアノを叩いてるように見えるのに、ちゃんと弾けているという光景は圧巻だった。
言わずとしれた、活動家でもある。政治に関しての歌詞をバンバン書いている人。
「今まで築き上げたキャリアが無くなるだの、さんざん言われてきた。でも、知るもんか。」そんなインタビューも楽しめるし、映画序盤のドラムを叩きまくるスティービーというレアな映像まで楽しめる。
世界観
最も有名な黒人の町を舞台に、当時の社会問題が描かれている。
黒人、ニスパニック系が多く住む地域をハーレムと呼んでいた。コットン・クラブのような華やかな社交場もあれば、仕事がない、毎日生きるもの精一杯、白人の月に到着したニュースなんか知らないよ、といった不安が渦巻いていた貧民街も存在していた。
貧民街では、暴動や麻薬の蔓延などが社会問題となっており、黒人たちにとって激動の時代を過ごしてきた。それに加えて、「キング牧師」「マルコムX」「ケネディ大統領」などの死も、ハーレムに住む人にとって暗い影を落とす要因となっていた。
1960年代にはまだ人種差別が蔓延っていて、白人警察による黒人の暴力や、人種差別主義者による無差別な殺人などが絶えなかった。10代の少年少女たちも例外なく暴力にあっていた惨い時代。1964年にハーレムでとうとう暴動がおこると、その後ロサンゼルス、デトロイトで大規模な暴動が起きる。その後、1969年にこのフェスが開催された。
ハーレム・カルチェラル・フェスティバル1969は開催され、映像も残されていた。しかし、公開されることは無かった。
イチオシ場面
それぞれのアーティストがどんな思いで、フェスティバルに参加したのかが見どころの一つではないでしょうか。
スライ&ザ・ファミリー・ストーンは「私たちは普通の人間」と歌い、ニーナ・シモンは手紙を預かってきたとその場で読み「準備はいいか?」と問いかけている。エンドロールの最後にちょっとしたスティービー・ワンダーのミニ映像も必見です。「トランプ大統領を選ぶことは、僕に車の運転をさせることと同じだ。」といってしまうひとならではの皮肉比喩が楽しめる事でしょう。
時代の変換期なだけあって、フェスティバルに来ている人達の中で流行っているアフロヘアなんか見てますと、楽しみが貧民の中にもポツポツと出始めているのも感じますし、自主性も伺えるのも面白いでしょう。木の上に登って鑑賞している自由な人も面白いです。
ちょっと気になっていた映画なだけあって、楽しかった。
自宅で映画を観るなら
参考資料